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日経平均最高値更新はバブルなのか?

こんばんは、矢口新です。

日経225平均がバブル期の高値を超え、
史上最高値を更新した。

株価の上昇は景気の良さを「示唆」しているが、
一般の日本人はその実感に乏しいのではないか? 

先週に発表された象徴的な一例を挙げる。

「1月のスーパー既存店売上高は前年比1.9%増だった。
11カ月連続で前年を上回った。

全店ベースの客数は0.7%増、客単価は1.7%増だった。

食料品を中心に値上げが続き、一品あたりの価格が上昇した。
買い上げ点数は前年を下回る傾向が続いている。」

スーパーは11カ月連続の増収なのだが、
それはインフレでの嵩上げで、消費者が生活必需品を買える量は減っている。

実際、どのテレビ局の番組などでも、
コスパ「安くて、いいもの」の紹介番組が増えている。

昔のバブル期には高くても売れた。

それどころか、
高いものほど価値があるという「勘違い」すら蔓延していた。

そこで今回の最高値更新について触れられていた多くのコメントを参考に、
これまでに私が得てきた知識を加味して、
前回と今回の違いを中心に私見を披露したい。

・中身も熱狂もない最高値更新

日経平均は今年に入って7週間余りで17%上昇した。34営業日での上げ幅としては1949年5月に日経平均が採用されてから過去最速ペースとなる。買い手の主役は外国人、米国のAIブームの余波が日本の半導体関連株にも波及した。

外国人は7週間で約2.7兆円の買い越しで、他の買い手は自社株買い中心の事業法人が0.6兆円の買い越しだけだった。最高値を更新した22日午後には「大手金融機関や保険会社がかなりのサイズで買ってきていた」ようだが、それまで年金、銀行、生損保といった国内勢はいずれも売り越しだった。新NISAでの投資は増えているが、それでも日本株は個人投資家も約1兆円の売り越しだった。

前回の高値はバブルと呼ばれた。バブルとは中身がないことの例え。根拠なき熱狂とも称される。前回は株価だけでなく、不動産価格もバブルだった。ちなみに、全国の不動産価値は1989年の2266兆円から2022年には1309兆円と低下したままだ。こちらの方が、この間の日本経済の停滞をよく反映しているとも見なせる。

中身がないとはいえ、バブルの絶頂期だった1989年には世界の時価総額トップ10企業のうち7社が日本企業だった。1位はNTT、銀行が5行、そして東電だった。その多くはサイズが大きいだけではなくトリプルAでもあった。当時は、日本の半導体産業も絶頂期だった。しかし今、世界の時価総額トップ50企業になるような半導体メーカーや、その半導体を買う企業が日本からいなくなっている。

今はトヨタ自動車が32位で、日本で唯一の時価総額トップ50企業だ。89年には世界の6割強の32社もあった。今の世界のトップ10は9社が米企業で、3位にサウジアラムコがあるのみだ。数年前には中国企業がトップ10を席巻していたが、中国の株価、不動産バブルの崩壊でゼロとなった。

そうした中国経済の悪化も日本株の最高値更新に貢献した。1つは香港上場の日本株ETFを中国人投資家たちが買ったこと。もう1つはグローバルなポートフォリオで中国売り日本買いが見られたことだ。

しかし、日経平均と東証株価指数を比較したNT倍率の急上昇が示唆していることは、東京市場全体に比べて225銘柄が大きく買われているという事実だ。これは2つのことを示唆している。

1つは、1銘柄買うだけで市場全体を買う効果を持つ日経225先物主導で買われているということ。これは主な買い手は外人だけだということと相まって、ヘッジファンドが買い上げていることを示唆している。

もう1つは日経225が持つ歪みだ。上記のトヨタは日経平均の構成率としてはトップ10にも入っていない。時価総額5位のNTTなどは100位近辺の影響力しかない。一方で、ファーストリテイリングだけで全体の約11%、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループ、信越化学までの上位5社で構成比は3割を超えるのだ。

つまり、半導体メーカーらと、同関連の海外企業アームの90%を保有するソフトバンクグループを買えば、効率よく日経225が上がるのだ。また、先物主導で上がるとき、割安となった日経平均現物でトヨタやNTTを買っていては、NT倍率はむしろ拡大する。先物と現物との価格差の裁定取引をするには、ハイテク銘柄を買う必要がでてくると言える。

似たような歪みは本家の米市場でも同様だ。パフォーマンスを左右するのは、極端に言えば、エヌビディアを買っているかどうかだ。

また、ウォレン・バフェットのポートフォリオの時価総額の約半分はアップルだ。このことは、アップル株が下げればバフェット神話も終わってしまいかねないことを示唆している。アップルを持ち過ぎていて、もう売るにも売れないのだ。先日、たかだか1%の売却でアップル株が崩れたように、売れば、自分のポートフォリオが悪化する。バフェットは、「株高騰は『カジノ的』だとし、投資機会の乏しさを憂う」とされているが、これが米国の今の株高を象徴している。そして、日本株はその余波に過ぎないとも言える。

バブルとは中身がないことの例え。根拠なき熱狂とも称されるが、今回の史上最高値更新は「カジノ的」で、中身も熱狂もないのではないだろか? 

また、日本人が得られる株高の恩恵も限られている。89年当時の日本株の外国人持株比率は5%にも満たなかったが、日本企業間の持ち合い株解消圧力を含む様々な規制導入の結果、今は30%を超えてきている。ちなみに、銀行や生損保などの日本の機関投資家の持株比率はピークの40%近辺から、今は1桁台にまで低下した。

・上場企業の収益は3期連続で最高益更新だが

中身がないとはいえ、今の株価を支えている要因の1つが好調な企業収益だ。上場企業の収益は3期連続で最高益を更新した。そのため、最高値でも株価を収益と比較するPERに過熱的な割高感は見られない。

しかし、この増益の主なものは上場企業の海外会社が上げているもので、円安と海外金利高が大きく貢献している。国内ではインバウンドとインフレが大きな要因で、これらも海外要因だ。国内経済は決していいとは言えない。

日本の実質GDP成長率は7-9月期、10-12月期と連続でマイナス成長となり、リセッション入りした。多くの需要項目がマイナスになり、民間在庫投資(つまり売れ残り)と政府消費支出だけがプラスとなっている。

2023年の名目GDPはインフレの影響もあり、前年比5.7%増の591兆円だった。(インフレ影響を除いた実質GDPでは1.9%増)。1989年は410兆円だったので、約1.4倍となった。一方で、世界経済全体では同時期に約5倍、米国は約4.5倍だった。

23年のドル換算GDPはドイツに抜かれ、日本は世界第4位に後退した。そのドイツもロシアのウクライナ侵攻以降は見る影もなく衰退していて、辛うじてリセッション入りを逃れているだけの状態だ。

GDPが伸びないために、現在の株価水準はGDPに対しては割高だ。上場株式の時価総額合計を名目GDPで割るバフェット指数では、超割高となる。

ちなみに、89年時の日本経済は規模でこそ世界2位だったが、各種のランキングでは1位だったように、中身は1位だったとも言えた。現在、主要経済国はいずれも衰退していて、上述の時価総額トップ10企業が示唆しているように、米国の1人勝ち状態だと言っていい。日本経済の数値を支えている日本企業の海外子会社の収益も、米経済への依存度が大きい。

また、そうした上場企業が収益を追及する方法が、国内空洞化に象徴されるように、日本経済を弱くしてきた。経費削減のために人件費や研究開発費、国内設備投資を減らし続けたからだ。そのため実質賃金の下落が続き、実質家計消費をはじめ多くの需要項目がマイナスになっている。

また、大企業はそうした経費削減を取引先の中小企業に転嫁してきた。そのためもあり、2023年の企業倒産は前年比3割増とバブル崩壊後で最も高く、15年ぶりに全7業種、全9地域で前年を上回った。

倒産の原因には人手不足も大きい。日銀短観の雇用人員判断によると人手不足感は90年付近のバブル経済期以来の強さとなっているが、女性の労働参加率がすでに米国を上回ったことなどからさらなる労働供給の増加が見込みにくくなっている。そうした構造的な賃上げ圧力も中小企業の経営危機を高めている。

増税、社会保険料の値上げ、実質賃金の低下に苦しむ中小企業の社員たちが賃上げを望めば、全体的な国内の需要不足に加えて、大手企業からの値下げ圧力、社会保険料負担などに苦しむ自分が勤めている会社を追い詰めることになっている。

1997年に543兆円あった名目GDPは、2009年と12年に500兆円を下回った。計算方法の見直しで30兆円上乗せして過去最大を更新したのが2016年の545兆円。そして、今が591兆円だ。政府と日銀による膨大な資金供給にも関わらず、そうした恒常的な需要不足は今もまだ解消されてはいない。

設立10年以上の企業が3年以上収入で債務の金利が支払えないゾンビ企業が、22年度時点で25.1万社と、2011年度のピーク27.4万件に迫った。22年度時点は無担保・無利息のゼロゼロ融資を続けていた時期だ。

政府による大手企業が属する経済団体への賃上げ指導は、取引先の中小企業のコスト削減を強いることに繋がる可能性が高い。これは中小企業で働く社員の給与は今後も上がらないどころか、ゾンビ企業が急増し、倒産が今後も増え続ける可能性を示唆している。日銀のマイナス金利政策解除による支払金利の上昇が、それに拍車をかけることは疑いがないと言ってもいいだろう。

そもそも日本経済がどうして需要不足に至ったのか? その背景、現況、問題点と、我々が置かれた環境についての詳細は拙著でも詳しく述べている。

参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方

・今後の株価はどうなる?

私がメルマガやブログで年初に述べた今年の日本株の見通しの要点は次のようなものだった。

1、GPIFへの影響も含めて、今年の日本株の動向を最も左右するのは外国人投資家。

2、2024年の米市場は長期投資を支える「人口増、景気拡大、金融緩和(マネーの増加)」の3つの要因が米株を支える。また、高金利で資金を引き付けてきたMMFの残高は6兆ドルを超えてきているが、短期金利の低下が始まれば他の投資物件に向けて資金が流出していく。国内外を問わず債券や株がその受け皿となる可能性が高い。

3、日本株の下値は限定的。日本株だけが下げれば年金は買い続けてくる。また、日銀もコロナ時に倍増させた株式の購入枠12兆円を維持したままだ。日銀が金融政策の変更を迫られるなか、日本企業の最大株主となっている日銀が株価暴落を見過ごす選択肢はないと言っていい。

4、相場では下値が堅いものは上げる。とはいえ、国内に右肩上がりを支える要因は(新NISA以外に)ない。このことは、今後も日本株は海外投資家の動向から目を離せないことを意味している。

参照:平成6年の日本株見通し
https://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-12835861450.html

経済的な支えがないのに、日経225平均株価が最高値を更新した背景の因果関係を箇条書きにしてみる。

1、コロナ対策として経済活動を止めさせたことの補償、損失補填として世界のほぼすべての政府が大量の資金を社会に供給した。

2、生産が止まったところに資金が世界にばらまかれたために、世界的なインフレが誘発された。各国政府の債務残高が急増したことが今後の大きな懸念だが、今回は触れないでおく。

3、インフレ抑制のためにほとんどの国が利上げを行ったが、放出した資金はまだ世界に滞留している。1例では、米短期金利市場のMMFに6兆ドル、CDに3兆ドルなどだ。

4、余剰資金が産んだSPAC(特別買収目的会社:投資家が白紙委任で資金を提供する未公開会社の買収を目的として設立される法人)やNFT(コピー不可能とされるオンライン上だけに存在する絵画や音楽などの様々な資産)などの投機バブルは利上げで概ね沈静化したが、インフレがまだ沈静化していないように、投機バブルがなくなった訳ではない。

5、米株の上昇は投機的だ。なぜならごく1部の銘柄が先導しているからだ。

一例を挙げると、多くの機関投資家はバフェットのような事実上の1点買いのような投資はできない。なぜなら、流動性の欠如は評価損益と実現損益の大幅な乖離につながるからだ。バフェットはもう自らアップル株は売れない。誰かが買ってくれるのを待つしかないのだ。

もう1つの投機的な例は、ソフトバンクグループが90%保有するアームだ。浮動株が10%と少ないために、連日で浮動株の半分以上が取引される事態となっている。

6、投機は割安・割高といったバリュエーションとは基本的に無縁だ。基本的にと断るのは、こじつけ的な材料としては使うことがあるからだ。NFTの価値が実際に買った人にしか分からないように、半導体の真の価値と今の株価とに関連性を求めるのはむしろ危険だ。

同様に、投機的な日経225平均の高値更新に、バリュエーションを求めるのは無意味だ。買えば上がるだけで、売れば下がるという事実を忘れてはならない。

7、投機筋は買いたいときに、いったん売って下値の堅さを確かめることすら行う。そのまま崩れれば売りが機能するし、下値が堅ければ安心して大きな買いを入れられるからだ。

日本株の下値は、日銀と年金が控えていることにより岩盤だ。いつか投機資金が買い上げることは時間の問題だったと言ってもいい。

8、とはいえ、日銀の岩盤の上部は3万1000円水準だった。年金は外国株、外国債、円などによって変動するが、日経平均の2023年の年間水準では6兆円以上の売り越しだった。

9、最高値を更新した22日午後には「大手金融機関や保険会社がかなりのサイズで買ってきていた」のはどういうことか?

1980年代以降、日本の生損保、銀行、その他金融は一貫して日本株の保有を減らし続けている。2005年から2023年にかけてでは、生損保は9.2兆円、銀行は7.8兆円、その他金融は2.6兆円売り越した。今年に入ってからでも売ってきている。それが最高値更新で慌てて買うだろうか?

1989年までのバブルが崩壊したのは、市場の内部環境からみれば、そうした政策投資と呼ばれる持ち合い株が解消売りを続けているのに、投機的な買いが膨らんでいたためだ。

そして、日経リンク債と呼ばれる仕組み債が日経平均先物のプットオプションを大量に売っていたために、株価下落と共にオプションがらみの売りが膨らむことになった。

地銀が個人への販売で行政指導を受けたように、現在も仕組み債へのニーズは強い。1997年以降政策金利が0.5%以上となったことがなく、2016年以降はマイナス金利政策が続いていることを鑑みれば、仕組み債などの高利回り商品へのニーズは以前よりも強いかも知れない。仕組み債券を法人化し、そこに融資する「仕組みローン」にすらニーズがあるという。

そうした利回りアップの定番の1つがオプションの売りだ。日経平均3万円のプットオプションの売り、4万円のコールオプションの売りを組み合わせて、プレミアム収入を仕組み債の利回りアップとしていた可能性は否定できない。

バブルの高値は抜けないと思われていたのなら、3.9万円から上にずらりとコールオプションの売りが並んでいた可能性すらある。それなら、「大手金融機関や保険会社がかなりのサイズで買ってきていた」ことは不思議ではない。

投資は量に制約があるが、時間の制約は緩い。一方で、投機は量の制約は緩いが、時間の制約は厳しい。

つまり、勢いのある時の投機は止められない。彼らにポジションの手仕舞いを強制する突発的な出来事が起きるか、ポジションの大きさに耐えられずに自律的に崩壊するか、時間的な制約と損益との兼ね合いがポジションの縮小を促すか、そうした時が来るのを待つしかないと言えるのだ。

それまでに、日経平均がどこまで上がるのかは分からないが、相場は困る人が増えるところにまで行く傾向がある。仮に5万円のコールオプションの売りが大量にあったとすれば、そこまで行ってもおかしくはない。

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  1. 岩田 義男

    何時も貴重な情報を有難う御座います。
    世界的な株価暴落が近づいています。
    特に金融・エネルギー・医療製薬です。
    理由はQプランの最終段階に来ている為です。
    Lightwoker Support Blog を参照願います。

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