信頼した方、裏切った方、どちらが悪い?
こんばんは、矢口新です。
昭和の流行歌では、
泣かされた女がお人好し過ぎたのか、
騙した男が悪いのか、というような歌詞が定番の1つだった。
それは捨てられた女の、せつない恨みの歌でもあった。もっともそれは、
自分の方から別れを切り出したのに、
いつまでも自分に未練を抱いていて貰いたいという男の側の身勝手な願望をも反映していたように思う。
想像だけに過ぎないが、自分と別れた後の女が、
すぐに元気に次の男と恋に落ちることは、複雑なものだろうからだ
そのような愛憎劇とは違うが、大谷翔平選手は、
信頼していた水原一平氏に裏切られていたことが明らかになった。
水原氏は追い詰められた挙げ句に魔が差したのではなく、
数年にわたって継続的に大谷選手の資金を流用していた。
あるいは、最初の1回は魔が差したのかも知れないが、
見つからないことをいいことに流用を繰り返していたのだ。
大谷選手はお人好し過ぎた、
あまりにも無防備に通訳に頼り過ぎていたという見方もあるが、
そうだろうか?
なぜなら、水原氏を雇ったのは大谷選手個人ではなく、
日本ハムやエンジェルス、ドジャースといった会社だったからだ。
私などもいくつかの会社に勤めたが、どの会社でも、
会社が雇っていた人々を疑ったことは一度もない。
特に海外にいた時には、
多くのことを会社や会社が雇った秘書の方々に頼っていた。
組織というのは不思議な機能を持っている。
もとは赤の他人の集まりに過ぎないのに、
仲間となったら、時には血縁以上に信頼関係で結ばれるからだ。
遠くの親戚より近くの他人とはよく言い得た言葉だが、
同じ会社、同じチームの仲間は、時には近くの親戚以上に親しくなる。
ましてや、海外にいてはそうだ。
海外に赴任すると、年金を含む社会保険への登録や銀行口座の開設、
自動車免許の取得などが必要となる。交通違反などをしてしまうと、
警察や裁判所への対応を現地の言葉で行うことになる。
私などは英語圏の大学卒なのだが、
それでも法律関係の文書は会社の秘書の方に確認して貰っていた。
その時、自分の解釈とその人の解釈が違ったとしたら、
その人の解釈に従っていた。仮に疑問に思ったとしても、
他の人に確認するようなことはない。
つまり、無防備に頼っていた。それが普通だ。
私などは長く生きてきたので、「騙された」というような目にもあった。とはいえ、それで人を疑うようになったようなことはない。なぜなら、圧倒的多数の人々にはよくして貰ってきたからだ。世の中には恨みより感謝の方が圧倒的に大きい。
人は環境次第で善人にも悪人にもなる。善人でも魔が差すことがある。悪人にも三分の理がある。一定の比率で真の悪人がいることはいる。世の中がそうしたものだとすれば、自分が裏切られたとしても、それは一定の確率で起こるべきもので、それによって自分の世の中への見方が変わることはない。少なくとも私にとっては、恨みより感謝の方が圧倒的に大きいと言えるのだ。
信頼した方、裏切った方、どちらが悪い? 1億円プレーヤーは一流選手だと見なしていいだろう。その20数年分の年棒、あるいは1億円プレーヤー20数人分の年棒を騙し取った方が間違いなく悪い。信頼されていることを悪用して裏切るのは、人間としても恥ずべき行為だ。とはいえ、今回の事件は大谷選手が、改めて大スターであることの証明となったのではないか?
アメリカ赴任経験者の見方を示してくださ理、ありがとうございます。世の中への見方、同感です。