空前絶後の暴落週を経て・・・
From:戸松信博
自宅デスクより、、、
おはようございます。
戸松信博です。
空前絶後の暴落週を経て、NYダウは最後の25分で1,370ドル上昇して終了
金融危機以来の下げを体感、指標的にも当時の底と同レベル
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<目次>
(1)グローバル相場見通し:
空前絶後の暴落週を経て、NYダウは最後の25分で1,370ドル上昇して終了
(2)新型コロナウイルスによって強制的な逆業績相場に
(3)2008年10月終盤のセリングクライマックス時と匹敵する下落
(4)今週の戦略
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(1)グローバル相場見通し:
空前絶後の暴落週を経て、NYダウは最後の25分で1,370ドル上昇して終了
【週間騰落率】
ドル(対主要通貨加重平均) + 2.92% (98.75)
株 (S&P500指数) - 8.79% (2,711.02)
商品 (CRB総合指数) – 9.63% (140.84)
金(ニューヨーク先物) - 9.31% ($1,516.70)
原油(WTI) -23.13% ($31.73)
債券(米10年債利回り) +21bpts (0.98%)
□ニューヨークダウ・ナスダック推移
WHOによる新型コロナウイルスの「パンデミック」宣言を受けた先週の相場をどう表現すれば良いのか難しいのですが、まさに空前絶後の暴落となりました。
13日(金)のダウは、前日の▲2,352ドル安という、値幅にして史上最大、率にしてブラックマンデー以来の下げとなった反動で、寄り付き直後から1,000ドルを大きく超える上げ幅となりました。しかし2時間後には1,000ドル超下げて前日終値付近まで戻しました。そこからやや値を戻して最終どうなるかという大引け前の25分間に、首尾よく+1,370ドル急伸し、何とか終値を前日比+1,985ドル高の23,185ドルとして終えました。
引け際の上昇がなければかなり悲観的な週末となっていたでしょう(大幅上昇で始まるも打ち消しと)。
今はダウの1,000ドルや日経平均の1,000円などの値幅は、2時間後にはどうなっているか分からない、あるのかないのか分からない誤差のようなものとなるほどボラティリティーが上昇しています。
こうなってしまったのは、相場が壊れたことを表します。壊れた相場では、基本的には投機による需給のみが株価を左右し、ファンダメンタルに基づいたまともな値踏みなど誰もしません。従ってPBR~倍とか、~円も下がったら流石に安い、という価値の尺度が壊れ、破壊的な値動きとなります。
値段など気にせず、幾らであっても売り、一転して買うとなれば幾らであっても買いに走るのです。相場が壊れているので、過去最大の上昇は必ず最大級の暴落時に起こります。この週のダウはまさにそのような日の連続でした。
ともあれ最後25分間の上げによって13日は+9%高し、週間でも米国株は欧米や香港などと比べ、最もましな下げ方で終わりました。米国が最後に閉じる市場なので、他の地域はまだこの反発を織り込んでいないからです。それでもS&P500は▲8.79%安、ダウ▲10.36%安、ナスダック▲8.17%安という下がり様ですが、2週前よりもまだましです。
ドイツDAX指数とフランスCAX指数は週間▲20%です。欧州の主要600社で構成されるSTOXX 600指数は、2月中旬に過去最高値を更新していました。それが今や年初来で▲28%安となり、この週だけで▲18%下がりました。
日本の東証一部全体を示すTOPIXは▲14%でした。昨年から手堅い安全資産として買いに買われていた賃料収入をベースとする東証リート指数は、▲22%安と株式以上に暴落しました。金融危機の時もこうなりました。ベンチャーなどの将来期待が株価形勢となる東証マザーズ指数は▲21%安と、こうなれば真っ先に売り込まれます。
銀行を代表するJPモルガンチェース株は13日に+18%もの大幅反発となりました。それでも週間では▲4%安であり、他のシティグループやモルガンスタンレーなどは、13日に同じほど上がっても週間▲10%超の下げです。
アップルの週間▲3.8%やマイクロソフトの▲1.7%安は最良と言えるものですが、テスラは▲22%下がり、年初来で一時+100%ほど上がっていたところから現在+31%となっています。半導体や電子部品関連は日米とも▲10%~20%台の大幅安です。
ダウ構成銘柄では前述のマイクロソフトがもっとも下げ幅小さく、ワースト3はボーイングの▲35%、エクソン▲20%、キャタピラー▲18%となっています。
サウジアラビアの増産姿勢の伝わった原油価格は、13日に+5%大幅高したものの週間では▲23%です。2週前に▲16%、1週前に▲8%下げたところからこの下げ率は驚きです。
価値基盤の弱いビットコインなどは、前週末に9,000ドルあったところから、一時3,900ドル台にまで大暴落しました。最新では5,400ドル台に戻しています。
金価格は週間▲9.3%の暴落となりました。米国上場の金鉱株で構成される指数は同▲32%安であらゆる資産クラスでワースト級のパフォーマンスです。
これは2011年夏の欧州債務危機時に米国株が▲7%~8%も下げる週が複数回あった時と同じ現象です。最初の株価暴落時は安全資産の金に買いが向かい、大幅逆行高します。その後も株価が暴落し、最後にとどめを指すように暴落したときは、金も今回と同じように週間9%を超える大幅安となったのでした。
余裕のある間は安全資産の金や債券、公益株などに資金が向かいますが、暴落が続くと株の損失を埋めるためにも安全資産も売られ、全て一緒になって売られます。大抵の投資家は分散投資を行っているため、株式で出た大幅損失を埋め合わせるべく、最後は儲かっている金や債券も売るのです。このようにしてあらゆる資産が売り込まれた一週となりました。
(2)新型コロナウイルスによって強制的な逆業績相場に
□ダウと長期金利(10年債利回り)
一週前に1%を下回った米10年債利回りを信じられない事として見ていましたが、株式市場が暴落する中で、同利回りは一時0.318%付近にまで低下しました。そして最後は株価とともに上昇し、0.983%と前週末比+21ベーシスポイントの上昇で終えました。他の年月の利回りも記録的な低下を一時記録し、長期金利の動き方とは思えない動きです。
現在FRBのゼロ金利への回帰を織り込んで1か月物~1年物まで0.3%台の利回りに低下し、そのことで利回りカーブは急激に立ち上がってきました。この形は一見、好景気時の強気形状のように見えますが、リーマンショック前後の動きもそうだったのですが、まず最初に景気が何とか持ち堪えているときに長期金利が著しく低下して一部の区間で右肩下がりの逆イールドが発生します(昨年夏や金融危機前)。次に本当に不況になる際に、FRBの利下げを織り込んで短期金利が暴落し、再び右肩上がりの形状に戻るのです。不況が進行しているサインと言えます。
昨夏からのダウと債券利回りをみると、金利の方が正確に今の不況入りを予見してきたように思います。年末からのダウの上昇はあまりに楽観的すぎました。その間違いのため、今一気の修正を余儀なくされています。
昨夏の金融危機以来となる逆イールド現象も、近くFRBが利下げせざるを得なくなるほど景気悪化するとの予見だったようにとれます。
コロナウイルスの影響で、この先不況入りするのは避けられそうになく、すでに消費者マインドは萎んでいます。結局景気や株価は消費がどれだけなされるかによって影響を受けます。現在は金融危機ではないのですが、コロナウイルスの影響で強制的に人々は外出を避け、旅行をやめ、外食やイベントにも行かないという自粛ムードです。この先、感染が止まっても消費者マインドは徐々にしか回復しないでしょう。
先に感染拡大の止まった中国ではコロナウィルスに便乗した賃下げが行われだしています。動きの止まった世の中で中小企業の資金繰りは苦しく、コロナウィルスを理由に賃下げをし、マインドの低下した労働者も失業の恐れを感じはじめ、賃下げを受け入れざるを得ない状況です。賃下げとなればさらに消費者マインド低下し、負の連鎖に入ってしまいます。
原油の大幅安がこの状況に加わったことは米国経済に追い打ちをかけます。サウジアラビアとロシアは米国のシェール産業(原油価格が50ドル以上でないと利益が出ない)を潰しにかかるように、需要減速の中で大増産をこれから数年も続ける模様です。米国は今や原油の消費国というより、世界最大の産油国となり、原油安はマイナスです。
もちろん、前回書いたように、CLO(ローン担保証券)の大きな部分にシェールオイル企業が関わっており、原油価格の低下が長引き、シェールオイル企業の倒産が出始まると、CLOを大量に買い込んでいる日本の金融機関に悪影響が出るおそれもあります。
一部に利下げや資金供給、経済対策があるので株価はV字回復に向かうと言う人もいます。金融危機時の金融機関は瀕死の状態で潰れかけていましたので、彼らを救う利下げや資金供給が大いに効きました。
しかし、今や金融機関の体力は十分強く健全で、助けてもらわなくても・・という感じでしょう。体力があり余っているのに栄養剤を打つようなものです。また家計を救うために現金のバラ撒きや減税が検討されていますが、消費者マインドの落ち込んだ家計では、しばらくは消費せず貯金に回る可能性があります。そもそもコロナウイルスは経済問題ではなく、金融危機になどなっていませんので、金融危機と同じ対策を行っても同等の効果が出るかは疑問です。したがって、株価のV字回復は難しいと思います。回復局面も時間をかけながら回復していく形になると思われますので、安値を狙うケースであっても、ゆっくりと身構える感じで良いと思います。
ここまで暗い話しを書きましたが、しかし、見方を変えれば大きなチャンスにもなり得ると思います。今回は政策金利を上昇させすぎて経済をオーバーキルしてしまうことによって発生した逆金融相場→逆業績相場ではなく、新型コロナウイルスによる強制的な逆業績相場への移行という形になる可能性があります。
もちろんあまり嬉しくない事態ですが、しかし、セミナーなどで日頃から言っているのは逆業績相場に入って株価が大きく下がったところが、みなさんが一番頑張って欲しい(優良銘柄を安く仕込めるチャンス)と言ってきました。逆業績相場に入るのはあと数年先となるシナリオから、コロナウイルスの影響で早まったと考えればピンチだけれども、それをチャンスにできるという見方も出来ると思います。
(3)2008年10月終盤のセリングクライマックス時と匹敵する下落
日経平均 17,431.05円 週間-3,319円 *過去最高値まであと+123%要
□日経平均
相場判定(長期):上昇トレンド継続中(2019/11/02~)
相場判定(短期):下落トレンド継続中(2020/01/27~)
注目セクター : なし
日経平均は週間▲3,319円安と過去最大の値下げ幅、率にして16%という破壊的な下落となりました。終値は17,431円で、一時16,000円台をつけ、3年4カ月ぶり安値水準で終えています。
東証一部の売買代金は全ての日で3兆円を超える大商いとなりました。13日(金)のメジャーSQでは4.9兆円近い商いをつけています。
▲1,129円安となった13日の騰落レシオは41.25で、金融危機時の52.75を大きく下回り、過去最低を記録しました。その日の昨年来安値1,721銘柄は統計開始以来で最多、ほかにも0.8倍台となった日経平均のPBRに加え、VIX指数や信用評価損益率なども金融危機時とほぼ同じ数字となっています。
体感的にも13日の下落は、2008年10月終盤のセリングクライマックス時と匹敵するものだったと思います。
ここまで下がると一旦反発すると思いますが、これで完全に底を打ったといえるわけではありません。一旦反発してから、さらに安値を抜いてくる恐れも残っていると思います。なぜなら、まだ先が見えないからです。どこまで感染が拡がるのか、いつまで続くのか、政府の対応はどれほど経済に厳しくなるのか、感染落ち着き後に萎縮した消費マインドはどの程度で回復していくのか等々、どれもまだ見えてこないところで底打ち感は出にくいでしょう。
どこかで底は打つはずですが、いつ、何円でというのはまだ全員手探りの状態です。
2008年金融危機の時は、その年の大発会を頂点に下げに下げ続けた上に、これでもかというほどの下げが10月に起こりました。3月のベアスターンズ救済で下げ、一旦FRBの緊急利下げで上がるも、6月に半世紀ぶりの続落日数を記録し、さらに8月のBNPパリバショックで大下げし、9月のリーマンショックで暴落したあと、止めに10月の大暴落となったのです。その結果一年で日経平均17,000円台から6,000円台となるまで大下げしたので、もういい加減いいだろうという感がありました。
それに比べ今回は、短期的には08年10月と同じ体感で下がっていますが、まだ底打ち感が出る状況ではありません。米国が欧州からの入国禁止する措置はこれから始まるところです。これから▲70%や80%減などという激甚な悪化を示す様々な統計や指標も沢山出てくるでしょう。どれほどの不景気になるのかまだ読めないところであり、1/27日の下落判定から続けているディフェンシブな姿勢を継続します。
(4)今週の戦略
週末のダウは1,985ドルの大幅反発、シカゴ日経先物は大証終値比+1,140円高い17,930円で終えています。米国の非常事態宣言を受けて新型コロナ対策への期待で買い戻され、長期金利も大幅上昇、大幅に円安にも振れています。
日本市場は大きく下げたまま終わりましたが、香港市場の13日は前日比7%を超える大幅安で始まるも、後場急騰し、下げ幅の大方を戻す大陽線が出ています。日本は反発がなかった分、月曜に大きく上昇しそうです。また17日~18日の日程でFOMCがありますが、利下げでゼロ金利に向かうことは織り込まれていると思います。
―戸松信博
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