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FRB緊急利下げも相場の動揺収まらず、底はまだ見えない

From:戸松信博
自宅デスクより、、、

おはようございます。
戸松信博です。

FRB緊急利下げも相場の動揺収まらず、底はまだ見えない
想定した反発は弱く、早くも安値更新へ、日経平均のPBRは0.99倍に

※※※※
<目次>
(1)グローバル相場見通し:
FRB緊急利下げも相場の動揺収まらず、底はまだ見えない
(2)米国金利崩壊で銀行株が大幅安
(3)想定した反発は弱く、早くも安値更新へ、日経平均のPBRは0.99倍に
(4)今週の戦略
※※※※※※※※※※※※※

 

(1)グローバル相場見通し:
FRB緊急利下げも相場の動揺収まらず、底はまだ見えない

 

【週間騰落率】
ドル(対主要通貨加重平均) -2.22% (95.95)
株 (S&P500指数)     +0.61% (2,972.37)
商品 (CRB総合指数)    -2.26% (155.85)
金(ニューヨーク先物)   +6.75% ($1,672.40)
原油(WTI)         -7.77% ($41.28)
債券(米10年債利回り)   -39bpts (0.77%)

 

□ニューヨークダウ・ナスダック推移

先々週に主要指数が各10~12%台の大幅下落となった反動で、一旦反発となったものの、上昇幅は非常に小さいものでした。週間の上昇率は、S&P500+0.61%、ダウ+1.79%、ナスダック+0.10%でした。

 

スーパー・チューズデイで国民皆保険を目指す左派サンダース氏の劣勢が伝わったことで、保険株の大幅上昇が効いたダウを除き、物足りない上昇幅でした。

 

週間の騰落率だけでなく、日々の相場も依然としてパニック的な様相を続けており、ダウが日替わりで1000ドル前後も上昇、そして下落となっています。一日の中でさえ高値~安値まで1000ドル級のジェットコースター相場となっており、金融危機の時の相場状況と似たようなものとなっています。史上最大の上昇というのは必ず最悪の相場の中で生まれます。

 

こうした相場の動揺を鎮めるため、FRBは3日、定期的なFOMCの開催を待たずに臨時の会合を持ち、0.50%の緊急利下げを発表しました。この異例の措置によって、この日のダウは300ドルほど上昇して始まりましたが、上がったところはすぐに売りを待ち構えていた大口投資家に押しつぶされ、高値から1,300ドル近く一時下げる場面(前日比▲997ドル安)もありました。終値では▲785ドル安となり、緊急利下げが効かなかった印象です。

 

翌4日は一転してダウが+1,173ドル高と大幅反発しましたが、前述ようにスーパー・チューズデイの選挙結果に市場が安心したことによります。しかし翌5日はまた一転して▲969ドル安という具合です。

 

完全に株式市場は崩れている様子で、2011年の夏(欧州PIIGS危機)や2016年初め(中国・資源安)にも同じ雰囲気がありました。一度このように相場が崩れると、V字回復ということはなく、修復には時間を要します。

 

先々週に31ベーシスポイントも下げて過去最低となった米10年債利回りは、さらにこの週39ベーシスポイントも下がる歴史的な事態となっています。3日の緊急利下げの際に初めて1%を割り込んだ同利回りは、6日に一時0.6572%まで下がり、終わりは0.773%でした。

 

債券と同様に再び安全資産の金に買いが集まり、金価格は+6.75%の上昇(先々週は▲4.98%安)で1,600ドルを超えました。米金利の低下でドルインデックスが大きく下がっており、105円台の円高ともなっています。また、原油はOPEC+ロシアによる減産合意を目指した会合が決裂し、6日に10%超下がるなどして大幅続落です。

 

(2)米国金利崩壊で銀行株が大幅安

□米国のイールドカーブ

金融危機や欧州債務危機をはじめ、これまでに何度も今のような相場状況を経験してきましたが、下げ方やVIX指数が示す動揺の具合は当時とあまり変わらないと思います。しかし、これまで一度も見た事のないのが、金利の消滅具合です。

 

これまで株価が下がって安全資産の債券に買いが集中し、利回りが急落することは幾度もありました。しかし今のように10年債利回りが一時0.6%台と、僅か2週で半分以下になったことなど見たことがなく、非常に不気味です。

 

長期金利(10年債利回り)は経済の体温です。長らく金利のほぼ無い日本では、経済成長も、物の価値(物価)や賃金も殆ど上がらない国となってしまいました。同じくマイナス金利が複数の国で発生している欧州も、成長率と物価上昇率が非常に緩い地域です。

 

米国だけは長期金利が2%や3%近くある国として認識しており、日本や欧州の銀行も米国債を購入して満期まで保有すれば、それくらいの利息収入を得ることができました。米国の物価は年率2%近く上昇し、賃金も3%くらい上昇を続け、経済もそれくらいの率で成長してきたので、同じ程度の金利が妥当です。

 

6日に2月の雇用統計が発表され、非常に強い数字がでましたが、2月は第3週まで株価も絶好調だったため、材料視されませんでした。それより新型コロナウイルスの影響が出る3月分の発表で大きく落ち込むことが懸念されています。その中で2月の平均賃金は前年同期比+3.0%に下がり、その上昇具合は19年初めに3.5%ほどあったところから徐々に低下してきています。

 

低下してきたとはいえ、まだ年率+3%は十分高いと思いますが、米国の長期金利が日本や欧州と同じようにゼロ金利に向かっているとすれば、もうこのような賃金の上昇も過去のものとなって、金利のない世界が伝染していく可能性もあるのではないかと危惧します。

 

3月17~18日開催のFOMCではほぼ確実に追加利下げが行われるでしょう。すでに政策金利は0.5%の緊急利下げで1.00%~1.25%まで下がっており、追加利下げで再び0%へ向かうと予想されます。そして長期金利も最終的にはゼロやマイナスに向かうとすれば、銀行は米国債という利息収入先を無くし、米金利に連動する様々な利鞘も縮小します。

 

米国金利崩壊を受け、大手銀行株が週間▲7~10%ほど下落し、相場と逆行安になりました。しかし、それ以上に下がったのは日本と欧州の銀行株で、特に欧州はドイツ、フランス、英国の大手銀株が軒並み▲10%~17%級の大幅下落となっています。

 

日本のメガバンク3行も▲7.5%~8.8%下落し、▲6.9%のJPモルガンチェースより大きな下げでした。業種別日経平均の銀行は1984年以来の安値を付けています。

 

ちなみに先週は原油価格も急落し、1バレル=41.28ドルまで下がっています。ここで懸念されるのは農林中金を代表に、日本の金融機関が大量に投資を行っている信用力の低い米国企業向けの貸出債権を束ねた金融商品「ローン担保証券」(CLO)です。世界的な低金利で投資先が限られる中、日本の金融機関は「ローン担保証券」(CLO)への投資を拡大してきました。

 

そして、ローン担保証券の大きな部分はシェールオイルの採掘企業によるものと言われており、このまま原油価格が低い状態が続くと破綻する企業が出てくる恐れもあります。もっとも、米国のハイイールド債ETF(証券コードHYG)は急落はしているものの、2018年や2016年頭のような水準よりは高い水準にあるので、今のところまだ大丈夫ですが、新型コロナウイルスの悪影響が予想よりも長期間に渡ってしまい、原油価格が現状レベルに長く停滞し続けると、CLOに対する問題に火が付く可能性があることは認識しておいても良いかと思います。

 

(3)想定した反発は弱く、早くも安値更新へ、日経平均のPBRは0.99倍に

日経平均 20,749.75円 週間-393円 *過去最高値まであと+88%要

□日経平均

相場判定(長期):上昇トレンド継続中(2019/11/02~)
相場判定(短期):下落トレンド継続中(2020/01/27~)

注目セクター : なし

 

2月最終週の大幅下落を受け、先週は多少なりとも反発があると想定していましたが、高く始まる場面があってもすかさず売りが入り、伸びあがるには至りませんでした。

 

そうして一進一退を繰り返した後、最終6日(金)は再び安く始まってさらに引けまでに一段安となり、日経平均は一時20,613円の年初来安値を更新しました。週間でも393円安の続落となっています。

 

2018年1月23日、2018年10月2日、そして今回2020年1月20日といずれも2万4千円を僅かに超える高値を付けました。そして三度とも翌日から続落が始まり、ここまで同じ日数で同じような位置(2万1千円前後まで)へ下がっています。2018年10月の際はさらに12月末へ向けて1万9千円まで下げていきました。

 

日経平均のBPS(一株あたり純資産額)は採用企業の開示があるごとに更新され、最新では20,959円にまで上昇してきています。株価は6日にこれを下回ったため、PBRは0.99倍となりました。

 

PBR一倍は「解散価値」とも呼ばれますが、これまでの暴落でも底となることが多かったものです。2018年末の世界的株安局面でもきっちりここで下げ止まりました。

 

しかし、現在ここで下げ止まるような雰囲気はまだありません。ローソク足と出来高の組み合わせを見ると、まだまだ出来高を増して大きく売られる日が続いており、少しでも上がれば売却チャンスを待ち構えていたような売りが出ています。売り需要は相当多いものと思われ、つまりまだこの先一段安となると予想する投資家が多いように見え、まだ売り玉は消化されていないと思います。

 

PBR1倍とは、理論的には資本コスト(会社が資金調達する際に必要な、銀行への利子、社債権者への利回り、株主への配当などのコスト)と同じ程度の利益しか上げられないことを意味します。日本企業のROEは7~8%程度と低く、これは資本コストを若干上回る程度の利益率であるため、日経平均のPBRは1倍を少し上回る1.1~1.3倍程度の株価で推移してきました。

 

しかしコロナショックで確実に景気と企業業績が下がり、その後の回復にも疑問が生じると、ROEは一段と低くなって、かつてのように5%以下(金融危機時はマイナスにも)となる事態も懸念されます。そうなると資本コストを下回る稼ぎでしかないので、PBR1倍割れは正当化されていきます。

 

金融危機のときがそうで、2009年3月には0.81倍まで下がりました。今の225採用銘柄の資本額にこれを当てはめると日経平均16,976円まで下がることになり、赤字になって資本額自体が目減りすればさらに下がることになります。

 

今のところはまだ底打ちが確認できていないことに注意を払い、不用意に底値を見込んだ買いを慎むようにしたいところです。安値を更新したばかりであり、まだ反発の芽(直近安値からの反発第一日目)すら出ていません。反発の芽が出て、次に4営業日以上かけてフォロースルーの上昇が出て、はじめて試し買いを仕掛けるべきです。その慎重に見える試し買いですら、失敗する確率は半々なのです。

 

(4)今週の戦略

先週末のダウは一時900ドルほど下げるも終盤に大きく挽回して256ドル安で引け、シカゴ日経先物は大証終値比280円安い20,430円で終えています。

 

流石に一旦は反発するとみていましたが、驚くほど反発力は弱く、日本株は安値を更新して終えています。

 

一週間を見てまだまだ底が深い可能性もあると感じられるところです。米国の経済指標も現時点では非常に強く、これから先どう悪化するのだろう、というのが大方の疑心暗鬼の状態であり、そういう時はまだ悪化を織り込もうとしている時期で、一段とオーバーシュートする可能性もあるところです。

 

―戸松信博

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