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小さな資金でも相場は動く

From 矢口新

一般に誰がどう考えても理屈に合わないようなことは長続きしないものだ。

大きな仕掛けや仕手戦がときに成功するかのように見えるとすれば、
それはまがりなりにも人を納得させ得るだけの理屈があるからだ。

そうでない場合、どんな大仕掛けでも成功はおぼつかないと言える。

Aの仕掛けで相場が上がったのではなく、
Aの仕掛けを「きっかけ」として上がったと考えるべきだろう。

そういうときの相場は、
単に上がる材料を欲していたにすぎない。

「仮にAが買わなければ、BかCが買っていた」というだけなのだ。

例えば、米国のナスダック市場で
2021年1月13日に25ドルほどだったゲームストップ(GME)株は、
1月28日には一時480ドルを超えるところにまで上昇した。

「きっかけ」は1人のカリスマ個人投資家がオンライン掲示板で呼び掛けた「買い推奨」だ。
同氏は「決して売るな」とまで呼び掛けた。

その理由は、同株の空売りが2020年12月末に流通株式数を超えていたことだった。

こうした呼び掛けの善し悪しはともかく、
合理性に裏付けられていれば、必ずしも大きな資金でなくとも相場を動かせるのだ。

当初の資金が小さくても、動き出せば買い推奨の注目度が高まり、
ある程度まで上げると空売り筋の買戻しが入るからだ。

同じように、信用取引の買い残高が異常に膨れ上がっているような時には、
売りで攻めることの勝算が高まっている。

皆で盛り上がって買い続けてきた相場の上値が重くなり、
高値を更新できなくなってきたとき、
そのようなときに売りで仕掛けると、少額の資金でも成功する。

なぜなら、ある一定幅の値下がりが信用取引の投げを伴うからだ。

ある一定幅だけ相場を押し下げてやれば、
多くの人が追い証を払えなくなり、あとは投げにつぐ投げで相場は急落する。

ここに100人の投資家がいて、
80個しか商品がない場合を想定してみよう。

当初、その商品が金融商品としての魅力を保っている、
すなわち割安である間は、その価格は着実に上昇する。

最初に買った人が利食いで売っても、
投資家の方が多いので新たな買い手はすぐに現れるはずだ。

買われ続けて、ほかの商品や相場環境に比べて割高となった後は、
価格上昇期待のみで上昇する。

買って儲けた人ばかりなので、買いが買いを呼ぶのだ。
仮にここで投資家の数が120人に増え、
何らかの事情で商品が60個に減ってしまうような事態にでもなれば、なおさらだ。

しかし、ほかの商品に比べて割高になってしまったということは、
その商品を買い、保有することにコストがかかり始めていることを意味する。

例えば、マイナス利回りの債券を保有することは
償還時にキャピタルロスが出るというコストを支払っている。

つまり資金の貸し手(株式や債券の購入者)が、
発行体が倒産するかもしれないというクレジットリスクを負いながら、
借り手の金利負担の肩代わりをしてやっているような、
非常に不自然な状態が出現してしまっているのだ。

ところが価格上昇期待の魅力は、
多少のコスト負担などを考える冷静さを投資家から奪ってしまうのが常だと言える。

乗り遅れまい、買い損ねまいと焦りだすのだ。

とはいえ、人が買える量には、基本的に限りがある。
資金が尽きたなら終わりだ。

それ以上に価格を押し上げる力も消え失せる。

もっとも、ここで信用創造をすると、
買える量はリスクとともに増大し、価格を押し上げる力も回復する。

さらなる価格の上昇は、他商品との割高感をさらに増すだけでなく、
信用借入負担を含めさらなるコストの増加を意味する。

このような状態が続くと、その相場には割高過ぎて新規の参入者が入れないばかりでなく、
体力のない投資家から順に脱落してゆく。

脱落者が出始めてもかまわずに買い続けると、
脱落者のコストをも引き受けることになるのだ。

そして価格上昇の魔力が消え失せたとき、
その商品がたとえ50個に減っていようが、
ただの割高商品に成り下がり、相場は下落し始める。

そのときに信用残が大きければ急落となるのだ。

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