相場を理解するうえで最も大切なこととは
From 矢口新
資産運用、ディーリングを問わず、
相場を理解するうえで最も大切なものの1つにポジションの概念がある。
ポジションには次の3つがある。
ロング(long)=買い持ち=+
ショート(short)=売り持ち=-
スクウェア(square)=ゼロ=0
ロングは「物を持っている」というポジションなので、
我々の日常生活に照らし合わせても理解しやすいと思う。
一方、「物が無い」というポジションであるスクウェアや、
「無い物を売ってしまっている」というポジションのショートは、
どういうことか理解し難い人がいるかもしれない。
債券や株式のロングは、
モノを買うという単純行為なので、
資金さえあれば何の問題もない。
ところがショートの場合、
無いモノを売るので、
買い手に渡すための現物を借りてきて売るという形をとる。
したがって品借りコストを常に頭に入れておかなければならないのだ。
また売りたくても借られなければ売ることができない。
債券や株式のように現物があるもの(商品)のショートには
「空売り」という言葉が使われる。
債券や株式の発行量は限られており、
品借りコストも相応にかかるので、
モノのショートはロングに比べて、どうしても不利になる。
したがって、
相場の下落を見越してショートポジションを作るときは、
先物を使うことが多いのだ。
株式の個別銘柄の下落を見越すときは、
信用取引を利用した品借りでショートをふることになる。
このことは債券や株式をロングにしている人は、
品貸し料を稼ぐことができることを意味する。
実際に、年金や保険会社などの長期投資家は、
保有株の貸し出しでトータルの利回りを上げているのだ。
一方、FXの場合は、
通貨の交換レートという性質上、
ドル円のショートとは「円ロング・ドルショート」、
ドル円のロングとは「ドルロング・円ショート」を意味するだけだ。
どちらかの通貨は必ずロングになるので
「空売り」という概念はそぐわなくなる。
FXトレーディングとは、交換レートの戦いなのだ。
したがってFXの場合、
ショートポジションとロングポジションの力関係は、
基本的に対等であると言える。
高金利通貨(High Yielding Currency)のロングは金利面では有利だが、
先渡しレートであれば金利差はスワップレートで調整される。
また債券や株式のように発行高の何割かを買って
ショートを絞り上げるなどという芸当は不可能だ。
ディーラーなどキャピタルゲイン狙いのトレーディングポジションは
常にスクウェアに始まってスクウェアに終わる。
つまりロング(買い持ち)はいずれ売り戻されてスクウェアになり、
またショート(売り持ち)はいずれ買い戻されてスクウェアになるのだ。
したがって、ロングは「売り戻し条件付き」の買いポジションであり、
ショートは「買い戻し条件付き」の売りポジションであると言える。
このことを知っていると、
実需や長期投資家の売りではない急落は、
いずれ買い戻される可能性が高いというようなことが分かるようになる。
要するにスクウェアポジションとは、プラスマイナスゼロの両建てのポジションのことでしょうか?