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とめどない貧富格差の解決法

From 矢口新

ウォールストリート・ジャーナルの報道では、
S&P500社2020年のCEOの報酬の中央値は1340万ドルと、5年連続で史上最高を更新した。

2012年からの伸び率は38.9%で、同時期の従業員の賃金上昇率28.1%を大きく上回った。

最高報酬はペイコム・ソフトウェア社創業者のチャド・リッチソンCEOで、2億1113万ドルだった。
一方、最低報酬はゼロで、テスラ社創業者のイーロン・マスクCEOだった。

とはいえ、マスク氏は同社の大株主であるため、
株価の変動により何度も一時的な世界一の大富豪なったり、落ちたりしていることが知られている。

参照:From Tesla to GE, See How Much CEOs Made in 2020

これで分かるのは、経営者と従業員の所得格差が拡大を続けているということだ。

報酬が数ドル以下の経営者たちも何人かはいるのだが、
彼らはマスク氏のように自社の大株主で、2019年以前に破格の報酬を受け取っている。

一方、2020年には2人のCEOが大企業であるS&P500社のCEOが及びもつかない報酬を手にし、
CEO報酬としての過去最高を記録した。

9月に新規上場したデータ解析会社パランティア・テクノロジーズのアレクサンダー・カープCEOは
2020年に、7億9800万ドル相当のストックオプションと2億9600万ドル相当の譲渡制限付き株式を含む11億ドルの報酬を獲得した。

12月に新規上場した料理宅配サービス会社ドアダッシュのトニー・シューCEOは、
上場直前に4億ドル以上の価値があった譲渡制限付き株式を手にした。

パランティアとドアダッシュはいずれも利益を出していない。

参照:Palantir and DoorDash CEOs Top List of Biggest Pay Packages in 2020

これは米国だけの問題ではない。
程度の差こそあれ、日本も同様だ。

社会主義国は、圧政に苦しむ者、世の中を良くしたいと望む者の良心や志を巧みに利用し、
指導者たちの独裁システムを作り上げた。

資本主義国は、誰にでも開かれた自由な市場という名目で寡占化を進め、かえって多くの人々を貧困にした。

地方のシャッター街はその1つの象徴だ。
100年を超えるような老舗の店が次々と店を畳んだ。
どんなに良いシステムでも、使い方次第では多くの人々が苦しむことになる。

勝てば官軍なのか? 
2024年から1万円紙幣の顔になる渋沢栄一は、人心の乱れを早くも明治時代に嘆いている。
その著書「論語と算盤」から以下にその部分を引用する。

「徳川三百年間を太平ならしめた武断政治も、弊害を他に及ぼしたことは明らかであるが、またこの時代に教育された武士の中には、高尚遠大な性向の人も少なくはなかったのであるが、今の人にはそれがない。富は積み重なっても、哀しいかな武士道とか、あるいは仁義道徳というものが、地を払っておるといってよいと思う。すなわち、精神教育が全く衰えて来ると思うのである。

われわれも明治六年頃から、物質的文明に微弱ながらも全力を注ぎ、今日では幸いにも有力な実業家を全国到る処に見るようになり、国の富も非常に増したけれども、いずくんぞ知らん、人格は維新前より退歩したと思う。否、退歩どころではない。消滅せぬかと心配しておるのである。ゆえに物質文明が進んだ結果は、精神の進歩を害したと思うのである」
参照:渋沢栄一著、論語と算盤(角川ソフィア文庫:P64~65)

赤字会社の経営者が空前の報酬を受け取るシステムはおかしい。
ゲームと言ってしまえばそれまでだが、成果の分配システムの不備で富が偏在し、苦しむ人々が増えているのだ。

社会主義国が独裁政治になってしまったのは、
民意を反映することができない「上がすべてを決めるシステム」だからだ。

資本主義国で貧富の差が拡大し続けるのは、「格差を固定する税システム」だからだ。

赤字会社のCEOが巨額の報酬を受け取っても、
その大部分を政府が徴収し、貧富格差の是正に充てれば、格差は目に見えて縮小するはずだ。

私の新著では、そうしたことを多くのデータをもとに解説している。

・新著案内:日本が幸せになれるシステム(著者:矢口 新、Kindle Edition:\500)
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