(矢口新)補正予算案の財源
こんばんは。
投資の学校プレミアム講師の矢口新です。
政府は2021年度補正予算案の財源として
国債を22兆円追加発行します。
21年度末の残高は初めて
1000兆円を突破する見通しとなりました。
規模ありきで成長の芽に乏しい予算づくりを見直さなければ、
経済が停滞したまま債務だけが膨らむ状況に陥りかねません。
21年度の国債発行額は
当初予算から5割増の65兆円超に膨らみます。
3度にわたる補正予算編成で
112兆円を超えた20年度に次ぐ規模となります。
リーマン・ショック直後の09年度の52兆円を2年続けて上回ります。
税収で返済しなければならない赤字国債や建設国債など
「普通国債」の残高は今回の補正予算案による上積みで、
21年度末時点で1004.5兆円となる見通しです。
21年度当初予算の段階では990兆円と見込んでいました。
10年度の636兆円から10年あまりで1.5倍以上に膨らんでいます。
参照:国債発行残高、1000兆円突破へ 財政悪化の底見えず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25BEB0V21C21A1000000/
このことに関連した部分を、
拙著「日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方」から引用します。
・16.民間から政府への所得移転
図18:利払い費と金利の推移(出所:財務省)
https://ameblo.jp/dealersweb-inc/
図18は1975年度(昭和50年度)から2020年度(令和2年度)までの
普通国債残高(水色の棒グラフ)と金利水準(桃色の折れ線グラフ)、
利払い費(黒色の折れ線グラフ)の推移だ。
残高に金利を掛け合わせると、おおむね利払い費となる。
前図17に見えたのは、
1年から15年超までの日本国債利回りがマイナスだったことだ。
現状でも9年超まではマイナスとなっている。
それによって銀行、証券会社から、
年金、生保に至るまでの金融機関がその安全性からコアとすべき運用先を失ったと述べた。
このことは、貯蓄や短期金融商品で資金運用し、
老後に備えて年金保険や生命保険を支払っている一般国民が
運用益を失ったことを表している。
一方で、何事も表があれば裏がある。
一般国民や金融機関、いわば民間が損をしているとすれば、
儲けているところがあるはずだ。
図18の水色の棒グラフで表された国債残高の推移をみると、
政府の借金が着実に積み上がってきているのが分かる。
その理由は前述したように、
歳出が増えつづけたのに、
税収がむしろ減ったからだ。
一方で、
桃色の折れ線グラフに見る金利は着実に低下している。
その理由は20年以上超低金利政策を継続しているからだ。
そのため、
黒色の折れ線グラフは横ばいから低下傾向で推移してきた。
この図が表しているのは、
借金の残高が急増しているにもかかわらず、
利払い費がむしろ減少してきたことだ。
このことは貯蓄から金利収入を奪い、
年金や保険から国債というコアとなるべき投資物件を奪い、
銀行の与信ビジネスを不採算化させるという、
民間に実質的な損をさせてきた超低金利政策で儲けてきたのが、
借金漬けの日本政府だったことを示している。
これは民間から政府への所得移転を意味し、
形を変えた徴税に匹敵する。
ここでも民間から資金を吸い上げるという事実上の引き締め政策となり、
デフレを長引かせる要因の1つとなった可能性を示唆している。
とはいえ気になるのは右端で、
利払い費が18年来の高水準となったことだ。
この図はまだコロナ対策での国債発行急増を反映していないが、
金利低下には下限があるうえに、
債務残高の膨張が歯止めを失ったような現状では、
利払い費が上昇トレンドに入ってきたと見ていていいだろう。
これは消費税を導入したのに総税収が減ったように、
民間から資金を吸い上げてきたのに、
政府自身が追いつめられてきたことを暗示する。
(私は、労働者軽視が企業業績悪化につながるように、
消費税を導入したから総税収が減った。
一般国民から資金を吸い上げ過ぎたために
政府が追いつめられたとみなしている)。
ここで、仮に利払い費が急増するようなことがあると、
日本の財政危機が顕在化する可能性が高い。
・「あとがき:衰退から繁栄へ」から一部抜粋。
とはいえ、
読者の方々が日本の未来を過度に悲観する必要もない。
未来は変えられるからだ。
歴史を紐解くまでもない。
過去10年だけでもどれほど多くのことが変わっただろうか?
より良い方向へ変わったとは言い難いが、
米国のトランプ前大統領が4年間で変えてしまったことだけでも数多い。
1989年の消費税導入や1997年の5%への税率引き上げで、
ほぼ瞬時にして繁栄から衰退へとトレンドが変わったように、
消費税を撤廃すれば何年もしないうちに衰退から繁栄へと転換する可能性があるのだ。
1988年度の税収は50.8兆円で、税収に消費税が加わった1989年度から2019年度までの31年間の平均税収は50.7兆円だ。この間、日本経済は1.41倍(円建て)に、世界は4.42倍(ドル建て)に成長したことを鑑みると、こんなに分かりやすい衰退の原因は見当たらない。この歪んだ税制さえ変えれば、日本は良くなる可能性が高いのだ。仮に、日本が世界の標準並みに成長し、当時の税制でそのまま税収増があったとしたなら、2019年度の税収は224.5兆円に達していた。
私がそう思う理由をいくつか挙げよう。
1.日本の経済規模は依然として世界3位
2.家計(自由業を含む)の純金融資産は2020年9月末時点で、1553兆円
3.民間非金融法人の純金融資産は2020年9月末時点で、243兆円
4.日本の海外純債権は2020年9月末時点で、386兆円
5.国内銀行109行の預貸ギャップが2020年9月末時点で、319兆円
6.年金資産(GPIF)は2020年9月末時点で、173兆円
7.皆保険制度が確立されている
これらは世界的には有数の評価対象となる。
くわえて、科学技術や文化、スポーツ、サブカルチャーといった分野でも、
世界をリードできるものを持っている。
また、世界でESG評価が金融情報として欠かせない分野になってきており、
株式や社債への投資のほか、
銀行の融資でもESG評価を参考にするケースが増えてきた。
ESG投資は世界の大手機関投資家がシフトを進めているものだ。
そんななかでウォールストリート・ジャーナルが、
世界の上場企業5500社以上を持続可能な測定基準の範囲をもとに
査定したランキングを2020年10月に公表した。
そのトップ100に日本企業が16社選ばれた。
参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
https://www.amazon.co.jp/dp/B092W1M8MZ/
<講師プロフィール>
矢口新(やぐち あらた)
1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。
東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。
相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。
■ 本日の出来高急増銘柄
※上昇銘柄の推奨などではありません。
※投資の学校の全講師の手法に使える、
銘柄選びの考え方です。
なぜ、
出来高急増銘柄が注目なのか、その理由と、
本銘柄を抽出した根拠はこちら。
→ https://youtu.be/xAVWjxMIq4c
売買の際には、ご自身でチャート分析、
ファンダメンタルズ分析を行っていただき、
売買をする際には自己責任にてお願いします。
【1】任天堂(7974)
株価(終値):51,340
日付:11月29日
売買代金(千円):66,986,740
【2】日本航空(9201)
株価(終値):2,050
日付:11月29日
売買代金(千円):38,661,860
【3】三井住友フィナンシャルG(8316)
株価(終値):3,781
日付:11月29日
売買代金(千円):37,802,980
【4】東日本旅客鉄道(9020)
株価(終値):6,853
日付:11月29日
売買代金(千円):27,163,680
【5】日本電信電話(9432)
株価(終値):3,168
日付:11月29日
売買代金(千円):24,862,540
*ランキングは売買代金の
総額に基づく順位を示したものです。
*この銘柄一覧は、
特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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